個の力・組織の力を活かす

どうすれば自分の職場で実践できるのか、その実践から積み上げられた知識や経験をどのように後任へ継承できるのか

人のよさだけに頼る組織には、何も残らない

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部署と部署のスキマに落ちる仕事…たくさんあります。「昔、いい人がいて、何故かわからないけれども、この仕事は、この部署でやっている」という不幸も、たくさんあります。

何処が扱うべきかわからない仕事…例えば、ダイバーシティ推進など、理念を周知する段階の仕事から、具体的な事業をいくつも抱える仕事になりました。にもかかわらず、昔いた「いい人」のおかげで、本来やるべき部署は無関心で、「いい人」が異動したあとも「とりあえず」扱っている部署も負担感が増すばかり。それを目の当たりにした若手は、「広い視野で」仕事をすることをデメリットに感じるようになり、彼らの能力は、例えば学外のみで使うのようになってしまう…
部署間の仕事のリバランスは、相当な体力が必要で、消耗戦で何の成果も残らないこともあります。だからと言って、5年前から、仕事が何も変わっていない部署の存在意義を疑わない状況を放置することも問題です。
解決策の一つとして、「新しい仕事を引き受けるのであれば、やめることも同時に決める」…これができたらよい訳ですが、「やめる」ことが苦手なスタッフが多いように感じます。他の業界では「やめたこと」を立派に成果として広く共有されますが、我が業界は「新しいこと」ばかりを褒め称えます。「新しいこと」と「やめたこと」の関係を説明していない事例を聞くと、「組織として、幸せだったのかなー」「成功事例の裏で、辛い気持ちのスタッフもたくさんいるんだろうなー」と感じています。
「やめること」…先生や学生に関わる事となると、より難易度が高まりますが、新しいことをはじめるタイミングは、多少は難易度が下がります。当然、事務室都合優先の廃止はよくありません。それこそ「広い視野」で考えるべきことです。
私は、新しいことを沢山やる方だと思いますが、かなりの事務も同時にやめました。ただの「いい人」ではないように、心がけています。
組織には、何を言ったって「見ないフリ」をする監督職はいます。スキマを拾うことで、結果的に得をしている(例えば、無駄仕事の廃止をセットにする。新規事業で達成感を味わう)経験をスタッフにもしてもらい、「魅力ある監督職」を目指してもらいたいと思います。

腑に落ちる機会を散りばめる

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挨拶ができる職場、我が業界はまだまだ少ないと思います。見たことのない人を見たら「見ないふり」をするタイプが多く、来客のタイミングでも、おしゃべりをやめない…。

4月からの職場でも「挨拶」をわざわざ組織目標に掲げていますが、はじめの2か月間はあまり言わないようにしてきました。
まずは、毎朝打ち合わせができること、そして、私が居なくても勝手に全員で打ち合わせができること。ここまでは、できるようになりました。そして今月は、打ち合わせのタイミングで「おはようございます^_^」を、大きめにしています。みな、ちゃんと声が出ていますし、初めて見る人を「迎える」動作ができるようになってきました。
挨拶は、実は難しいと思っています。当たり前の事だと思っていながら、自分のものとして、自然に発せるようになるのは、時間がかかるものです。
そのため、挨拶は3ヶ月目のテーマとしています。決して、挨拶を強制していません。ただ、私は少し大きめに発しているだけです。2ヶ月の打ち合わせで、チームで働く意味を、自ら理解し行動しているのだろう、と思います。
組織運営は「腑に落とさせること」ではなく「腑に落ちる機会を散りばめること」。すぐに出来るように育てるのではなく、自発的に出来るように、じっくり育てたいと思います。

「確認したか」を改めて確認する

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あるスタッフからの報告の最後に、昨年のだいたいの数字を聞いてみました。私の肌感覚と合わなかったので、実数を調べさせたら、そもそも桁が違いました。「先生が言っていた」という話を、具体的に誰がいつどこで、と聞くと曖昧だったので、改めて問い直すと、実は担当者の思い込みだった…
ミスが多かったり、進行管理ができなかったり…気になるスタッフには、「本人の思い込み」がないか、粘り強く確認するようにしています。この「都合の良い思い込み」を治さない限り、どんなテクニックを教えても、仕事は改善されません。主観と客観を分けて頭にインプットし、報告すること。特に数字には誠実であること。この当たり前が、意外とできないのです。

このやりとりを数回やると、自分でよく調べるようになるなど、仕事の様子が変わってきます。あいつの話は信用できない…になる前に、粘り強く確認したいと思います。

机を征服しなければ

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異動するたびに思うこと…前任者は、引き出し使っていたのかな?…。訳のわからないカギに印鑑、黄ばんだ通知文…何代前かの健康診断を発掘したこともあります。

着任後しばらくは、前任者に電話で確認する必要があるため机周りの位置を変更しないようにしていますが、2週間程度したら、一度全部出して入れ替え&廃棄候補に分類するようにしています。
先日、それをやってみたところ、引き出しが半分程度空きました。後は、年一回の文書廃棄までに「廃棄候補」を空いた時間に精査します。これと同じ作業を、共有フォルダでもやります。
仕事を自分のものにするためには、まず、自分の机&電子ファイルを征服する必要があると考えています。はじめは少し手間はかかりますが、デスク周りを征服した後は、気持ちに余裕(どこに何があるか把握できている)が出て、プラスαにもチャレンジできます。
そんな話を朝礼でしたところ、ライン単位で起案文書のファイルをまとめたい、というアイデアが。仕事には「よいクセ」を身につけることが重要であると、改めて感じました。
捨てるスキル…「机の征服」から、身につけることができます。

innocent world

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4年勤めた職場は、人事異動により今日が最後の出勤。3年半前からはじめた毎日の朝会も、自分が話す事は今日が最後。いつもは思いつきで話していましたが、最後に話す事は、少し前から決めていました。

 

innocent world…ミスチルのこの有名な曲…「夕食の話題も仕事に汚されて」が有名なフレーズですが、私はそのあとの「様々な角度から、物事を見ていたら、自分を見失っていた」がとても好きです。
副担当としてサポートすること、部署全体の動きを把握する事、そして、毎日の朝会も、チームで仕事をするためには重要。だけれども、その延長には「周りに気を遣いすぎて、自分という色を出せない」という沼にハマるかもしれない。周りと協調する事と、自分を出す事のバランスをどのように保つか、が重要だと思います。
様々な角度から物事は見てほしい、だけれども、自分が何者で、何を大切にしていて、何がしたいのか、も忘れないでほしい。様々な角度から物事を見ることは手段であり、目的ではない。
風通しのよい明るい職場になった。「異動したい職場」として名前が出てくるようになった…が、その先に「とりあえず、みんながそうだから、今のままでいい」という罠が待っているので、その手前で立ち止まり、ちょっとだけ自分を出してみてほしい。
自分を出してみて、他者を認めて、みんなで協力して、の三重奏を忘れないで、これからも風通しの良い職場であり続けてほしい。

 

来週からは、また、ゼロから職場づくりに挑みます。

点を理解できる人が、面で仕事をする強さ

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新卒でいきなり出先に着任、担当業務は部署の庶務担当…理系男子で情報系が強く、周りへの気配りも抜群なスタッフでした。彼の悩みは、同期との差…情報も人脈も、親会社にいれば手に入るものが、どんなに頑張ってもつかめない。

その後、親会社へ帰り、次の異動が決まったとのことで、2年ぶりに顔を出してくれました。異例の抜擢のようでした。
彼の話では…出先の部署庶務担当をやったおかげで、契約も雇用もシステムも…1人でなんでもできることに驚かれた。庶務担当として身につけた「他のスタッフの状況を把握しながら仕事をする姿勢」を評価してもらえた…遠回りかと思っていたら、そんなことはなかった。
庶務担当をすれば、誰でもそんな成長ができるとは思いません。本人の頑張りと、先輩スタッフの「一人前に育てよう」というフォローが、いまの彼の活躍につながっていると思います。これからも「遠回りに感じる」配置があるでしょうが、彼ならば、ちゃんと歩くことができるでしょう。
全体を把握…自分の周りの同僚一人ひとりの状況を把握できないようでは、中期計画や業界動向に明るくても、ただの評論家になってしまいます。大きな仕事は1人ではできない。人を巻き込んで大きな仕事をできる人は、「ひと」の把握がうまい。点を理解できる人が面で仕事をする強さ、を知った彼のこれからが楽しみです。

顔が見える仕事

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同期の名前を、◎◎計画や基本方針と言った資料の担当者として見ることが増えたスタッフが、「私の仕事は、○○さんと○○先生と…だいたい30名位にしか影響しないんですよねー」とつぶやきました。全体に影響を与えている(と、見える)仕事に比べ、自分の仕事は、かなり地味だ、と思っているようでした。

ある日、サポートの必要な学生が無事に進級できた、と窓口へ報告にやってきました。同期の活躍(と、見える)に悩むスタッフが言う○○さんのうちの一人です。
学生は、このスタッフの眼差しの優しさに何度も救われたと言い、おかげで、学内での嫌な事も我慢できたそうです。
この学生は、自分の過去の辛い経験を活かした事業を考えていて、新聞の地方欄にも掲載されるような活躍ぶりです。
同期の活躍に悩んでいるこのスタッフの仕事が、○○さんの活躍につながり、結果、たくさんの人の幸福に寄与する、と考えれば、君は社会全体に影響を与える仕事をしているのでは?と話しました。
「顔が見える仕事」とは、担当者の心構え次第で無限の可能性を秘めています。そもそも優秀だったから資料の担当者欄に名前が出てくるような仕事ができたのではなく、たまたま担当業務がそれだっただけなので、お互いに勘違いしないようにしなければなりません。
確かに能力は異動の重要な判断材料です。しかし、能力だけで配置を決められるほど、人事は単純じゃありません。タイミングの方が、より重要な要素になる時期もあります。どうせ、いつかは資料の担当者欄に名前が出てくるようになる。その時に、目の前の顔すらまともに見ることができない方が困るのだから、今は自信を持って「顔の見える仕事」にがむしゃらになるように伝えました。
さて、自分の今の仕事は、固有名詞が想像できるだろうか。
贔屓はいけない、けれど自分以外の顔が見えない仕事にはしないよう、気をつけようと思います。